少しずつ壊れていく母。その母を追いかける義父。
自分のことしか考えない二人に振り回されながら中学生になった私の生活は、加速しながら悪い方向へ転がっていきました。
中学生になっても治らなかったおねしょ
中学生になってからのことはあまり思いだせません。
覚えているのは、自分でお弁当を作っていたことぐらい。
夜の仕事をしていた母は、朝は起きてきませんでした。
どんなお弁当を作っていたかも全く思い出せないけど、冷蔵庫に何もなくて作れなかったり、寝坊して作れなかった日には少ないおこずかいでパンを買っていました。
それもできない日は「お弁当を玄関に忘れた」とうそをつき、お水を飲んで過ごしました。
この頃はまだ毎朝顔を洗うということを知らなかったので、顔を洗ったり歯磨きをする習慣もありませんでした。
髪をとかすぐらいはしていたのかな?
それもあまり思い出せません。
相変わらず洗濯物は汚れたまま洗濯機の横で山積みになっていました。
汚れた洗濯物の中からタオルを引っ張り出し、お風呂上りにそのタオルで体を拭く生活でした。
そして私は、この頃になってもおねしょをしていました。
寝る前に5分ごとにトイレに行ったり、水を飲まないようにしたりしましたが、どうしても治りませんでした。
守ってもらえない思春期のプライバシー
少しずつ体が変化していく年ごろ。
狭い家の中で着替えるときには、義父の目が気になるようになりました。
ふすまを閉めて隠れて着替えていると「子供のくせにませたことするんじゃない」と母親に怒られたのを覚えています。
閉めたふすまを開けられ、義父の前で着替えさせられたこともあります。
当時の家は脱衣所を通らないとトイレに行けない作りだったので、義父がいるときにお風呂に入るのがとても嫌でした。
私の入浴時にトイレに行くふりをして何度も脱衣所を通る義父。
それを止めない母。
まさに地獄ですね。
夜逃げ
中学1年生の夏、学校から家に帰るとめずらしく両親が家にいました。
「すぐに荷物をまとめて。今すぐ引っ越しよ」
早口で母親に言われました。
何を言ってるのか意味が分かりませんでした。
家の中を見ると、家具や百科事典、そのほかいろんな物に小さな紙が貼られていました。
「紙には絶対触らないで。服と学校の物だけまとめなさい」
また早口で言われました。
訳が分からないまま小さなカバンに教科書と服を詰め込みました。
その後のことはあまり思い出せないけど、すぐに車に乗せられて知らない街に移動したのだけは覚えています。
小さなアパートに着き、「今日からここで暮らすのよ」と言われました。
6畳2間に母と義父、妹と私の4人で暮らし始めました。
今思えば、あれは夜逃げだったんだと思います。
そして家具は差し押さえられていたんですね。
借りたお金はすべてお酒とギャンブルと贅沢に使っていたんだと思います。
自分の親ながら情けない限りです。
そしてこのアパートで暮らし始めた頃から義父の暴力がひどくなりました。
私の態度が気に入らないと理由をつけては、頭や体を思いっきり叩かれました。
手加減なしの男の力で叩かれるので、痛くて怖くてよく泣いていました。
そして事件が起きる
あれは忘れもしません。
中学2年生のクリスマスイブの夜の事でした。
胸が苦しくて夜中に目を覚ました私の横に義父がいました。
そして私の首元には刃物がありました。
今すぐお前を殺すことができる。
そしてお前の体はさっき俺がもらった。
どこにほくろがあるのかも俺は全部知ってる。
恨むならお前の母親を恨め。
お前の母親が他の男と遊ぶからいけないんだ。
これは俺からお前の母親への復讐だ。
そう耳元で義父がつぶやいていました。
震える手で自分の体を確認すると、パジャマがびりびりに破かれ裸になっていました。
怖くて動くことも泣くこともできず、じっとしていたのを覚えています。
そして体のあちこちが痛かったのをうっすら覚えています。
どのくらい時間がたったのか分かりません。
外が明るくなった頃、義父は私から離れ外に行ってしまいました。
すぐに制服に着替え、妹を連れ家を飛び出しました。
ちょうど2学期の終業式の日だったので、そのまま学校に行きました。
教室に入りホッとしたのかな?
私はそのまま泣き崩れました。
驚いたクラスメートが私を抱え保健室に連れて行ってくれました。
そしてそこで、私は初めて自分の気持ちを他人に吐き出しました。
今までされてきたこと、ついさっき起きたこと。
私の話を保健室の先生が一緒に泣いて聞いてくれていました。
それからすぐに、保健室の先生と社会の先生が私を警察に連れて行ってくれました。
信じられる大人はどこにもいない
警察官は男の人でした。
一緒に女の警察官もいました。
小さな部屋に通され、何をされたのか細かく聞かれました。
その後、病院にあるような診察室に連れていかれ、男の先生に診察されました。
ベットに横になるように言われ、たくさんの女の警察官に体を抑え込まれ、地獄のような診察が始まりました。
ここを触られたのか?
どこまで触られたんだ?
怖くて暴れて泣き叫ぶ私。
暴れれば暴れるほど抑え込まれる体。
でもよく見ると、私を抑え込んでる女の警察官の人たちも泣いていました。
ここにも悪魔がいるんだと思いました。
この女の警察官たちも私と同じ。
悪魔に逆らえずにいるんだなと思いました。
母に捨てられた私
警察に着いてすぐ、私はお願いをしていました。
母には連絡をしないでほしいと。
でも無理ですよね。まだ14才の未成年なんだから。
しばらくして母親が来ました。
そして警察官から私が義父に襲われたことを聞かされていました。
そしてその後、母が警察官に言ったんです。
「この子は嘘をつく癖があるので信じないでください」
私は耳を疑いました。
実の娘が襲われたのに、母は娘ではなく義父をかばったんです。
母が浮気をしたのが原因で、私はこんな目にあったのに。
母が義父以外の男と夜遊びばかりするから、そのせいで私は襲われたのに。
私じゃなく義父を取るんだって、どこまで行っても母ではなく女としてしか生きられないんだなって思いました。
この母親の子供であること、血を分けた親子であることも、吐き気がするくらいおぞましく思いました。
この後の記憶はなく、どうやって家に帰ったのかは覚えていませんが、またあの小さなアパートに帰り、そこで暮らさなければならないことが悲しくて仕方がありませんでした。
その日の夜は怖くて眠れなかったのだけは覚えています。
これからどうしようかと、そればかり考えていました。
そして、母親に捨てられたことを痛いほど感じていました。
すでに母親ではなくなっていたけど、母親らしいことなんて何もしてくれなかったけど、それでも小さくともっていた望みの光が消えてしまったことを知りました。
そして、生まれて初めて「死にたい」と思いました。
コメントを残す