雨の日に思い出すこと

雨は好きだけど嫌い

雨の音も香りも身体が濡れる感覚も、全てが洗い流されるようで好きなんだけど。
同時に寂しい気持ちが顔を出す。

記憶なんてものは、自分の都合のいいように塗り替えられていくから。
私の記憶は事実とは違うんだけど。

雨が降ると、暗い部屋の中でひとりぼっちでお腹を空かせている私を、思い出すんだよね。

記憶は塗り替えられるけど、細胞に感覚が残ってるのかな。

雨の日に学校から帰ると、家に誰もいなくて寂しかったこと。
濡れた服を着替えることもしないで、冷たい部屋の中で過ごしたこと。
冷蔵庫を開けても何も入ってなくて、お水を飲んでいたこと。

その場に妹がいたのかは思い出せないけど、きっと妹と過ごしていたはず。
そんなことも思い出せないくらい、人の記憶って曖昧。

なのに感覚は昨日のことのようによみがえる。
寂しくて悲しくて、温もりを求めた感覚。

これを悪いことと思って、乗り越えようとしたこともあったけど。
過去を乗り越えるなんてできないってことを、今は知ってる。

乗り越えるより、その感覚をそのまま感じていればいいことも、この年齢になってやっと知った。

長かったよ。
50年以上かかったんだもん。

だからね、これをもっと早く知れば、抗って無駄な時間も労力も使わなくていいから。
それを伝えたくて心理カウンセラーになりました。

あの頃の私は寂しかったんだな。
それでも今こうして生きていられる。
そう思えばいい。

今の自分があの頃の自分より幸せなら、それでいいよね。

今日も雨が降ってる。
暗い部屋の中で膝を抱えてる感覚がよみがえる。
そして私はその子に声をかける。

大丈夫。
あなたはこれからも生き続けるし、幸せをつかみ取れるからって。

抗うことに疲れたら。
そのままを感じることも試してみてね。
乗り越えなくても生きていけるからね。

ではまた。